RESTful API データモデリング

RESTful APIにおけるリソースIDのデータモデリング:UUID vs シーケンシャルID

Tags: RESTful API, データモデリング, ID設計, UUID, シーケンシャルID

はじめに

RESTful APIを設計する上で、各リソースを一意に識別するためのIDは不可欠な要素です。このIDの設計は、APIの使いやすさ、パフォーマンス、そしてセキュリティに大きく影響します。特に、どのような形式のIDを採用するかは重要な決定事項の一つです。

よく用いられるIDの形式には、データベースの連番で生成される「シーケンシャルID(連番ID)」と、重複の可能性が非常に低いランダムな文字列である「UUID(Universally Unique Identifier)」またはGUID(Globally Unique Identifier)があります。

本記事では、これら二つのID形式の特徴と、RESTful APIのデータモデリングにおいて考慮すべき点について解説します。

RESTful APIにおけるリソースIDの役割

APIにおけるリソースIDは、主に以下の役割を担います。

  1. 一意性の保証: システム全体で特定のリソースを一意に識別します。
  2. リソースの参照: APIエンドポイントのパスなどで、操作対象のリソースを指定するために使用されます。
  3. リレーションの表現: 異なるリソース間の関連を示すために、外部キーとして利用されます。
  4. 永続的な識別子: リソースが作成されてから削除されるまで、そのリソースを指し示す固定の識別子となります。

これらの役割を踏まえ、APIの要件に合ったID形式を選択する必要があります。

主要なID設計パターンとそのAPIモデリング

ここでは、シーケンシャルIDとUUID/GUIDに焦点を当て、それぞれの特徴とAPI設計上の考慮事項を説明します。

1. シーケンシャルID (Auto-increment ID)

シーケンシャルIDは、一般的にデータベースのオートインクリメント機能などによって自動的に割り振られる連番の整数値です。

2. UUID/GUID (Universally Unique Identifier / Globally Unique Identifier)

UUID/GUIDは、標準化されたアルゴリズムに基づいて生成される128ビットの値で、非常に高い確率で一意性が保証される識別子です。通常はハイフン区切りの16進数文字列として表現されます(例: a1b2c3d4-e5f6-7890-1234-567890abcdef)。

どちらを選ぶか? 比較と使い分け

シーケンシャルIDとUUID/GUIDのどちらを選択するかは、アプリケーションの要件や特性によって判断します。

| 特徴 | シーケンシャルID | UUID/GUID | | :----------- | :----------------------------------- | :--------------------------------------------- | | 推測可能性 | 高い(連番) | 低い(ランダム) | | 生成場所 | 主にデータベース | アプリケーション、データベースどちらでも可能 | | 分散環境 | 衝突リスクあり(工夫が必要) | 衝突リスクほぼなし | | 可読性 | 高い | 低い | | サイズ | 小さい(通常数値) | 大きい(文字列) | | DB効率 | 一般的に高い(インデックス等) | バージョンや実装による(低い場合がある) | | 用途例 | 内部管理用API、非公開の短いID | 公開API、機密性の高いリソース、分散システム |

判断のポイント:

例えば、一般ユーザーに公開するプロダクトAPIで、ユーザー、商品、注文などのリソースIDにはUUIDを使用し、管理画面など内部的なAPIで、ログやバッチ処理関連の一時的なデータなど、推測されることによるリスクが非常に低いリソースにはシーケンシャルIDを使用するといった使い分けも考えられます。

IDの公開範囲:内部IDと外部ID

APIで公開するIDと、データベースで実際に使用するIDを分ける「内部ID」と「外部ID」という考え方もあります。

このアプローチを採用する場合、APIリクエストで外部IDを受け取り、内部で内部IDに変換してデータベース操作を行うというマッピング処理が必要になります。これにより、内部のデータ構造に依存せずAPIを設計できるというメリットがありますが、マッピングの管理と処理コストが発生します。

API設計上の具体的な考慮事項

アンチパターンに注意する

APIのリソースID設計におけるいくつかのアンチパターンを認識しておくことも重要です。

まとめ

RESTful APIにおけるリソースIDの設計は、APIの安全性、保守性、スケーラビリティに深く関わる重要なステップです。シーケンシャルIDはシンプルさとデータベース効率に優れますが、推測されやすいというセキュリティリスクを伴います。一方、UUIDは高い一意性と推測されにくさから公開APIに適していますが、サイズやデータベース効率の面で考慮が必要です。

どちらの形式を選択するにしても、APIの利用シーン、セキュリティ要件、システムアーキテクチャ、そしてデータベースの特性を総合的に判断し、慎重に決定することが求められます。また、選択したID形式に合わせて、APIパスやリクエスト/レスポンス構造、そして最も重要な認証・認可の実装を適切に行うことが、堅牢なAPI設計には不可欠です。

本記事が、皆様のRESTful APIにおけるID設計の参考になれば幸いです。